2014年7月20日日曜日

ツール・ド・フランス体験レポート その② 「沈黙の艦隊」


取材二日目の19日、14ステージはグルノーブルという町がスタート地点になります。
アルプスに近いこの町は、古い建物をリノベーションして新しい用途に使用する一方で、
モダンな建造物も少なくないハイブリッド的なイメージが強くて、フランスっぽくて趣があります。
写真はホテルの窓からのカット。自然とのコントラストがいい感じです。


V.I.Pスペースでスタートまで時間を潰します。キャフェや軽食などが無料で振る舞われ、
スポンサーブースが多く並びビジネス臭のするエリアということですね。
写真はマイメンのデイヴィッド from USAとジルベルト from Brazil。


今回のサポートカーは5台体制。乗車するのは第2サポートカーといって、
セカンドディレクターと共にメインライダー以外のサポートをこなす。
車種はFordのフォーカスっぽいけど日本には入ってきてない型かもしれません。
ヨーロッパ限定かな?ディーゼルターボのようでパワーは申し分なし。


11:45にレーススタート。第2サポートカーなのでほぼ最後尾を追いかける。
パラパラと雨が振ってきて不穏な空気に包まれる。しかし、一番目の峠の向こうは晴れているとの情報。


序盤で選手に指示を出すセカンドディレクターのアレックス。
スペイン人だが英語、フランス語も話す。運転がクレイジーで有名なんだとか。こわ。


レースは序盤に17名程の逃げが決まって、それをメインの集団が追随する形となり、
マイヨジョーヌのニバリ他有力選手はメインで待機している。
写真はニバリが所属するアスタナが集団を引いている様子。
この後、先行する集団に追いつく為にNetApp-ENDURAの選手に無線で指令が伝えられ、
先頭でペースを上げろという指示が出された。


そしてレース中盤、超級山岳のイゾアール峠へ突入。
この時にはメイン集団はNetAppの強力な引きによってペースが上がり、
先頭集団とのタイム差が見る見るうちに縮まっていく。
もちろん今回もレオを勝たせるためのオーダーが組まれている。
最後の峠までレオを温存するべく周りのチームメイトが奮闘する。


ネットアップのサポーターも応援に駆けつけた。コースの両サイドに合計15名ぐらいの団体で、
話を聞くと週末なのでドイツから応援に駆けつけた連中とのこと。


メインが先頭集団に追いつき、レースは終盤のリゾル峠へ。
この辺りからプロトンを引きまくったライダーが集団から脱落してくる。
その中にNetApp-ENDURAのザックの姿も。彼は体が大きいのでエース級を引く仕事がメイン。


このタイミングで水分や補給食を渡し、再度集団に追いつくための準備をする。
標高が高く気温が下がっているのに加えて、長い下りが控えているのでジャケットも手渡す。
イゾアールの一番高いところから麓までの下りで標高差が1,300m程。
ザックがいる後方集団にはグライペルもいるので、15名程の小さなグループだが
再びメイン集団に追いつくべく各々協力してスパートをかけていく。


ハイジの世界観そのままの景色。酪農が盛んのようで至る所に馬や牛が放し飼いされている。
冬は厳しい寒さと雪に覆われる地域だが、夏は避暑地としても有名で、
国内外から多くの観光客が訪れる。特にオランダ人はアウトドアが好きな人が多いのか、
割合的にも多いのだとか。


1,000mを超える標高を一気に下って行く選手たちと、それを追うサポートカー。
ライダーは最高で時速100kmぐらいで駆け下りていく。
それを同じスピードで車も追いかけるんですが、
それはもう、ジェットコースターの比じゃないスリルが味わえます。
両サイドに観衆がひしめく狭い道を時速100km近くで走るので、
まるでWRCのラリーカーに乗ってる感覚です。
アレックスは運転は上手いけどたまに脇見をするので(無線情報をメモしたり)、
ヒヤヒヤする場面が多く、同時に久しぶりに車に酔いました。


本来、第2サポートカーというのは逃げ集団にチームライダーが追随した場合に、
先頭集団をサポートする役割を持ちますが、結果的に今回の逃げには乗らなかったので、
出番無しということで終始後続支援に徹していました。
毎レース5台もサポートカーが必要というわけではないですが、
いざという時の準備を万端にしておくことでトラブルを防いで好成績獲得の確率を上げるわけですね。
ということで14ステージのチームの裏方は、さながら沈黙の艦隊のようだったということで。
最終的にはレオが9位でフィニッシュし、総合順位も8位にランクアップさせた。
まだまだ厳しい戦いが続きますが、ステージ優勝を狙っていろいろ戦略を練っているようなので、
残り1週間の彼らの活躍に期待したいです!


最後に、今回の取材でびっくりしたのは観客の多さ。
何度かジロ・デ・イタリアを観戦したことがありますが、その規模を遥かに上回っていると思います。
14ステージが土曜日だったことと、基本的に7月がフランスのバカンスシーズンということも
人の多さに拍車をかけているとは思いますが、200kmに及ぶほとんど区間でコースの両サイドには
老若男女、国籍問わず多くの観衆で埋め尽くされている光景は圧巻です。
そして選手への声援もハンパなく、ここにいる全ての人がレースを楽しんでいるのを肌で感じました。

長い歴史によってヨーロッパで育まれた文化なので、日本のそれと比べるわけではないですが、
やっぱり本場のレースの雰囲気を体験しないことにはその神髄に触れることができないなぁ、
と、手前味噌ながら思った今回の取材でした。

近々レースで撮ったその他の写真などをご紹介するのでお楽しみに!



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