2016年10月17日月曜日

2016 IRONMAN WORLD CHAMPIONSHIP レポート ~FUJIサポートライダー今村 圭孝選手~


10月8日(土)に開催されたアイアンマン世界選手権に参加したFUJIサポートライダーの今村 圭孝選手よりレポートが届きました。さあこれからというスイムスタート直前でアクシデントに見舞われた今村選手。スイムからバイクへのトランジットで13分もかかったその訳は?自分に何かアクシデントが降りかかったらどう対処するか、考えさせられるものがあるのではないでしょうか?このレースへの強い強い気持ちが前へ前へと歩を進めたようです。ぜひご一読ください。

 
開催日              201610 8日 (土)
場所                KONAHAWAII
距離                  Swim 3.8km / Bike 180km / Run42.2km
TOTAL TIME      10:18:47
Age 35-39           DIV RANK 139位 (日本人1位)
使用バイク          FUJI NORCOM STRAIGHT 1.1 (株式会社アキボウ)


Swim58:20
スイムスタートまで10分くらい前に入水し、先頭のところまでアップを兼ねて少し泳いでいく。防波堤にあるタイヤにしがみつき、スタートまで待っていたのだがここでトラブル発生。防波堤に足を着いた瞬間に足の裏に激痛が走る。ウニを踏んでしまい右足の拇指球にあたりにトゲが無数に刺さってしまった。慌てて抜こうとしたが出ているトゲを折ってしまい、残ったトゲは足の中へ。一瞬何も考えられなくなりどうしようと焦ったが、ここまできて焦ってもしょうがない。スタートまで時間がないのでとりあえず泳いでから考えることにした。

スイムのコンディションは良く穏やかで泳ぎやすい状態だった。スタートしてから200mほどダッシュして泳いだが当然抜けられることもなく、周りには大柄の外国の選手が大勢いるが自分のポジションをみつけ、前の集団を見失わないように泳いだ。沖に出ると多少のうねりはあるものの、泳ぎにくいという感じはなかった。途中からは少し早い選手の後ろにピタリと付き、体力を温存しながら泳いで折り返しの船を回り、岸に向かっていく。折り返してからは周りの選手も大分少なくなり、自分のペースで泳ぐことができスイムアップ。

岸に上がり足の裏を着くと激痛が走り、とても足れる状態ではなかったためとりあえずバイクをピックアップ。バイクスタートゲートにバイクを置いて、メディカルにチェックイン。ウニのとげが刺さっていると説明し、抜いてもらおうとしたが、泳いでいるうちにトゲは足裏の奥深くに入り込み、抜くのも困難な状態であったため痛み止めの麻酔薬を注射器で直接注入し始めた。激痛が走り、涙が出るほどだったが、このまま走るのは無理だったので歯を食いしばって我慢する。どうしても完走だけはしたかった。少し経つと感覚がマヒしはじめ、足裏に違和感があるものの痛みが和らいできた。いける!メディカルのボランティアに「OK!」と言って慌ててバイクに飛び乗った。
【T1: Swim-to-bike】13:35

  
Bike5:34:22
バイクスタート、メディカルで何分ロスしたのか分からないまま先を急ぐ。前方に日本人選手がいて言葉を交わす。その選手から「焦るな!」と声をかけられたが、クアキニハイウェイを下っていくと相当数の選手とすれ違い、いったい何分ロスしたのか分からず、不安しかなくなり、ペースを上げ、少しオーバーペースぎみで進んでいく。いつもならバイクで抜かれていくのだが、外国の選手をごぼう抜きしながら折り返し、急坂を登ってメインのクイーンKへと出た。クイーンKに出てからは向かい風も強くなってきたため、重いギアでぐいぐいと踏んで前に進んでいたが、外国人選手のドラフティング集団に抜かれ、その後ろでドラフティングにならない距離を保ちながらついていく。集団の中の何人かがマーシャルにドラフティングをとられていた。クイーンKに入ってからは時間をしっかり見ながら走り、パワージェルを定期的に摂取しながらエネルギー切れにならないよう注意した。エイドでは水をもらい足の筋肉、首の後ろにかけて冷やし、ドリンクもこまめに飲んだ。クイーンKを左に曲がり、ハヴィに近づいてくると右前方からの風が強くなり思うように前に進んでくれなくなったが、しっかりペダルに体重を乗せることを意識しながらペダルを回す。ハヴィを折り返すと少しの間追い風になり、ここぞとばかりにスピードアップ。クイーンKに戻る手前からまた向かい風になってきた。

クイーンKに戻ってからは向かい風も強く、アップダウンの下りを利用して上手くスピードを維持していたが、始めのオーバーペースが響いて足に力が入らなくなり辛くなってきて一気にペースが落ちてしまった。その頃から少し足裏にちくちくとした痛みが出始めてきたので麻酔がきれたら、と不安になる。そうしているうちに足に力が入るようになりはじめ、前方にコナ空港の管制塔が見えてきた。あと少し。コナの町中に戻り、クイーンKを右折して少し下るとトランジットはもうすぐそこで、観客も多くなり賑やかになってきた。足裏が気になるが、バイクを降りて痛みがあればメディカルに行くつもりだったが、バイクフィニッシュして足をついてもさほど痛みもなかったため、そのまま走ることを選択した。
【T2: Bike-to-run】3:38

 

Run 3:28:52
ランに入りアリィドラブを下って行くと、足裏に違和感があるものの走れなくはなかったのでペースを見ながら420“から425”の間で刻んで走っていく。折り返しの何キロくらい手前だろうか、日本人1位の選手とすれ違う。そこからも気持ちを切らすことなくしっかりとペースを刻んでいき、エイドでは水をかけ、氷で筋肉を冷やし、コーラを飲んで糖分を定期的に摂取していった。観客からはゼッケンに書かれたYOSHITAKAの名前をみて「ヨシー!ヨシー!」と声をかけられた。アリィドライブからクイーンKに入り、ゆるいアップダウンの続く精神力が試される直線へと入っていく。

前だけをみて一歩一歩進んでいくとちょうど20kmくらいのところで足裏に今までと違う痛みが走った。明らかに麻酔が切れかけている。痛くて思うように走れなくなってきたが、ペースが落ちすぎないように足のつき方を試行錯誤しながら何とかキロ5分前後を維持して走った。たまにトゲが刺さったところで蹴ってしまい激痛が走るが、そんなことを考えている余裕はなかった。今回のレースは強い気持ちをもって参加していたからだ。9時間30分、これが目標であり達成したかった。が、もうその時間は過ぎていた・・・だから止まることは自分に対して負けを意味していたし、歩いてでも完走だけはしたかった。クイーンKからエナジーラボを折り返し、再びクイーンKに戻って来ると残り約10km。ここからが一番きつくなるところで、足の痛みも引くどころか痛みを増してきていたが、手に持っているパワージェルの入ったフラスクボトルを握りしめ、しっかり前だけをみて走り続けた。クイーンKから右折してシーサイドホテルのある交差点まで来ると、残り1.5km。最後は長い一日を噛みしめながら進んでいく。最後のフィニッシュゲートが見えてくると、終わってしまうという寂しい気持ちと、やっと終わったという安堵感が入り乱れていた。



フィニッシュゲートをくぐると、「You are an IRONMAN!!」のアナウンスが聞こえた。一年の挑戦が終わった瞬間だった。コナに入り、身体の調子も上がって、今回はいけるという自信があっただけに自分の不注意によって目標を達成できずに悔しい気持ちはあるが、何があっても臨機応変に対応していくのも大自然のなかで行われるトライアスロンの魅力の一つ。しっかりと受け止めて、今後に生かしていきたいと思う。応援して頂いた方や、サプライヤー様ほんとうにありがとうございました。また来シーズンもしっかり戦えるように努力したいと思います。

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